日本物理学会

我々の世界は素粒子からできている. 素粒子には「反粒子」という,質量はまったく同じで性質がまったく逆,という相棒が存在する.たとえば最も身近な素粒子である電子には,「陽電子」という反粒子が存在する.粒子と反粒子は電荷などの性質がまったく反対なので,出会うと+と-が打ち消し合って消滅し,エネルギーの塊になってしまう.逆にエネルギーを狭い空間に集中させると,粒子と反粒子の対をつくり出すことができる. 宇宙のはじまりであるビッグバンにおいても,巨大なエネルギーの塊から粒子と反粒子が生み出された.粒子と反粒子は必ず対になってつくられるので,宇宙に粒子が創成されたとき,粒子と反粒子,すなわち物質と反物質は厳密に同じ分量だけつくられた.だが現在の宇宙には,見わたすかぎり物質しかない.反物質はいったいどこに消えたのだろう?